はじめに
「スーツは新調したけれど、靴はとりあえず安いやつでいいか……」 ついそう思ってしまいませんか?
しかし、新社会人にとって一番投資すべきアイテムは、実は「靴」です。
前回の記事で、筆者が新社会人の時に3万円のリーガルの革靴を買ったお話をしましたが、結果としてその1足が、筆者に「本物の靴と歩む喜び」を教えてくれました。安物の靴を数ヶ月で履き潰して買い換えるより、良い靴を愛着を持って長く履くほうが、結果として財布にも優しく、自分への自信にも繋がります。
今回は、実体験と失敗から学んだ、「新社会人がまず揃えるべき革靴の正解」を徹底解説します。
1. なぜ「3足」必要なのか?ローテーションの鉄則
まず、最初に揃えるべき靴の数は、ズバリ「3足」です。 「いきなり3足も買えない!」と感じるかもしれませんが、これには理由があります。
1日履いた靴は「コップ一杯の汗」を吸っている
1日履くと靴は汗を大量に吸収しており、乾燥させる前に連続で履くと急速に劣化が進行します。目安として中2日(約48時間)の休息が必要です。
- 1足を毎日履き続ける: 革が常に湿った状態になり、内部が傷んで悪臭の原因になる➕最悪1年持たずで靴底が抜けます。
- 3足でローテーションする: 1日履いたら2日休ませることで、靴が長持ちします。1年でダメになる靴が、3足回しなら、手入れ次第では10年以上履けるようになります。
Point: 最初に無理をしてでも3足揃えることが、長期的に見て一番の節約になります。
2. 失敗しないデザイン選び。まずは「内羽根ストレートチップ」
革靴には多くのデザインがありますが、とりあえず新社会人が選ぶべきは以下の2種類にしておくのがベターです。
① 内羽根ストレートチップ(黒)
つま先に一本の横ラインが入ったデザインです。「冠婚葬祭から重要な商談まで、これ一足で100点」という王道中の王道。1足目はこれを選んでおけば間違いなしです。筆者は、仕事➕急な冠婚葬祭に対応できるよう2足持ちです。

つま先部分に一直線の切り替えラインが入り、靴紐を通す「羽根」部分が甲の下に縫い付けられている内羽根式デザイン
② 2足目は外羽根プレーントゥ
2足目は少し表情を変えてみましょう。装飾のない「プレーントゥ 」は柔らかな印象を与え、ジャケパンスタイルにも合わせやすい万能選手です。

つま先や甲に装飾が施されていないシンプルなスタイルの革靴
② 3足目は職場次第で柔軟に
3足目は職種・職場ごとにケースバイケースで。毎日スーツを着る、フォーマルな場面が多い職場、装いについて出来るだけリスクを犯したくないのであれば上記の「内羽根のストレートチップ」もしくは「プレーントゥ」を買い足しましょう。
カジュアルな装いがOKであれば、「Uチップ」「タッセルローファー」 等を選ぶと、休日のコーディネートにも幅ができます。
ちなみに、色はすべて「黒」で揃えるのがおすすめです。黒は様々なコーディネートに合わせやすいことに加え、ベルトの色を合わせる手間が省けるからです
※革靴の色とベルトの色は合わせましょう(職場、街中でよく革靴とベルトの色がバラバラの方を見かけますが、、、、)。

つま先(アッパー)がU字型に縫い付けられている

クロケットアンドジョーンズ キャベンディッシュ2 ※筆者私物
ローファーの甲部分に「タッセル」が付いた紐なし革靴
3. ブランド選びの正解。3万円〜で選ぶ「一生モノ」の定番3選
新社会人が「投資」として選ぶべき、信頼の3ブランドを紹介します。
① REGAL(リーガル)
「日本のビジネスマンの足元を支え続けて半世紀」
- 歴史と信頼: アメリカ生まれのブランドですが、日本では半世紀以上にわたり独自に進化してきました。日本人の足を最も研究している、国内シェアNo.1のブランドです。
- 履き心地: 最初は「少し硬いかな?」と感じるかもしれません。しかし、それは頑丈な作りの証拠。履き込むほどに、靴の中のコルクが自分の足の形に沈み込み、世界に一つだけの「自分の形」に育っていきます。
- 価格帯: 3.0万円〜3.5万円前後
- 筆者の視点: 迷ったらここを選べば間違いありません。全国に店舗数が多く、まさに「一生モノ」の入り口にふさわしいブランドです。
② SCOTCH GRAIN(スコッチグレイン)
「一足の靴に込められた、東京・墨田区の職人魂」
- 歴史と信頼: 日本の職人集団「ヒロカワ製靴」が展開する生粋のメイド・イン・ジャパン。世界中から厳選した最高級の革を使い、日本の職人が一足ずつ丁寧に縫い上げています。
- 履き心地: 「グッドイヤーウェルト製法」という、高級靴の代名詞的な作りを採用しています。型崩れしにくく、しっかりとした安定感が特徴です。
- 価格帯: 3万円〜4.5万円前後
- 筆者の視点: スコッチグレインの素晴らしいところは、購入時に「木製のシューキーパー」が付いてくることが多い点です。「靴を大切に扱う」という文化まで一緒に手に入る、誠実なブランドです。
③ Jalan Sriwijaya(ジャランスリウァヤ)
「高級靴の製法を、驚異のコストパフォーマンスで」
- 歴史と信頼: インドネシア発のブランドですが、元々フランスの高級ブランドの生産を請け負っていた背景があり、技術力は欧州の高級靴と肩を並べます。
- 履き心地: 最大の特徴は「ハンドソーン・ウェルテッド製法」という、手縫いによる仕上げです。通常、この製法は10万円クラスの靴に使われるものですが、ジャランスリウァヤはこれを3万円台で実現しています。最初から驚くほど足馴染みが良く、返り(歩きやすさ)が柔らかいのが魅力です。
- 価格帯: 3万円〜4万円前後
- 筆者の視点: 「手縫いの履き心地を、この価格で味わえる」のは、業界でも異例のコスパです。少し都会的でシュッとしたデザインが多く、スーツ姿をよりスマートに見せてくれます。
4. 5万円〜の靴は「まだ」いらない。3万円〜の靴が「正解」である理由
世の中には5万円、10万円を超えるような芸術品のように美しく履きごごちも素晴らしい高級靴も存在します。確かにそれらは素晴らしいものですが、新社会人の最初の一歩として、筆者は「3万円〜の靴」こそが最良の選択であると考えます。
- 確かな品格: リーガルやスコッチグレインの靴は、確かな素材と伝統的な製法で作られており、ビジネスのあらゆる場面で堂々と振る舞えるだけの十分な質を備えています。
- 本格的な「育てる楽しみ」を味わえる: 安価な合皮の靴とは違い、本物の革を使用しているため、磨けば磨くほど奥行きのある光沢が生まれます。履き込むことで自分の足の形に馴染み、唯一無二の「相棒」へと変化していく経年変化(エイジング)を存分に楽しめます。
- 「一生モノ」の入り口: 3万円〜の本格靴は、靴底を張り替える修理が可能です。適切にお手入れを続ければ、10年以上という長い歳月を共に歩むことができます。
10万円の靴は確かに素晴らしいですが、それはいつか大きな仕事を成し遂げた時の目標として取っておきましょう。今のあなたを最も力強く、かつ誠実に支えてくれるのは、この3万円〜の「本物の靴」です。
5. 【雨の日対策】新社会人の天敵への備え
日本の梅雨やゲリラ豪雨は、革靴にとって最大の敵です。
- 雨用の一足を持っておく: 雨の日用の1足を持っておくことをお勧めします。多少の雨や急な雨であれば仕方ないのですが、台風や大雨時には本革靴の着用を避けることが無難です(ゴアテックスが採用された靴等が安心ですが、難しければ通勤時のみスニーカーを履くなど、クリティカルな大雨を避けるようにしましょう)。
- 防水スプレーの習慣: 新品の靴を履き下ろす前にスプレーするだけで、汚れの付き方が劇的に変わります。
- 濡れたら新聞紙: もし濡れてしまったら、ドライヤーは厳禁。新聞紙を詰めて、風通しの良い日陰でじっくり乾かしましょう。
まとめ:良い靴は、あなたを素敵な場所へ連れていく
「おしゃれは足元から」と言いますが、ビジネスの世界では「誠実さは足元から」です。
手入れされた靴を履いているだけで、自分自身の気持ちが引き締まり、相手からの信頼も得やすくなります。筆者が新社会人の時にリーガルを買って感じた、あの「背筋が伸びる感覚」を、ぜひあなたも体験してみてください。
まずは、お近くの靴屋さんで「黒の内羽根ストレートチップ」を試着することから始めてみましょう

