革靴ケアの基本 馬毛ブラシの選び方と正解|10秒のブラッシングが、30年後の靴を決める。

革靴の手入れと聞くと、多くの人が「クリームを塗って磨き上げる」シーンを想像します。しかし、靴を長く、美しく履き続けるために最も大切なのは、実はその前段階。「馬毛(うまげ)ブラシ」による汚れ落としです。

今回は、意外と知られていないブラシ選びの基準と、筆者が実践している日々のルーティンについてお話しします。

なぜ、汚れ落としには「馬毛」なのか

ブラシには豚毛や山羊毛など多くの種類がありますが、基本的に汚れ落としには「馬毛」を使用します。 馬毛ブラシは密集して植えられていることから、靴の隙間やメダリオン(穴飾り)に詰まった細かい砂埃をかき出すのに最適だからです。

また、毛先がしなやかなので、豚毛硬い毛のブラシに比べてブラッシングの跡が残りづらいです。
※特にコードバンのような繊細な靴をケアする際は、硬い毛のブラシの使用はNGです

埃は革の水分や油分を吸い取ってしまう天敵。だからこそ、クリームを塗る前の「掃除」こそが、最も重要なメンテナンスになります。

馬毛ブラシ ※筆者私物
上から、馬毛ブラシ、豚毛ブラシ、羊ブラシ ※筆者私物

失敗しないための「3つの選定基準」

「どれを買っても同じ」と思われがちな馬毛ブラシですが、使い心地を左右する明確な基準があります。

  1. 「大きさ」は効率に直結する 「全長15cm以上」の馬毛ブラシの使用を推奨しています。小さなブラシは小回りが利くように見えますが、何度も手を動かす必要があり、埃を払う効率が落ちます。手のひらからはみ出す程度のサイズ(18〜21cm)を選ぶと、一振りで広範囲をカバーでき、日々の手入れが驚くほど楽になります。
  2. 「毛の密度と長さ」が隙間を制する 毛がスカスカのブラシでは、コバ(靴の縁)の隙間の埃をかき出せません。「植毛密度が高く、毛足が3cm程度あるもの」を選んでください。毛足が長いと適度な「しなり」が生まれ、靴の細かな凹凸に毛先が入り込みやすくなります。
  3. 「持ち手の形状」は疲労を左右する 意外と盲点なのが、持ち手のサイドにある「溝」です。大きなブラシは滑りやすいため、サイドに指が掛かる窪みがあるものを選ぶと、軽い力でブラッシングでき、手から滑り落ちるのを防げます。
    ※筆者は特に不便を感じていないので、溝なしの長方形型を使用しています。
馬毛ブラシ ※筆者私物

疑問:カラーごとに使い分ける必要はあるのか?

結論から言うと、汚れ落とし用の馬毛ブラシは「一本あれば十分」です。

クリームを馴染ませる「豚毛ブラシ」は色移りを防ぐため色分けが必須ですが、馬毛ブラシはあくまで埃を払うのが目的。基本的には色移りの心配はありません。

ブラシの寿命と「買い替え」の目安

馬毛ブラシは非常にタフな道具です。基本的には数年から、丁寧に使えば10年以上は余裕で持ちます。 買い替えを検討すべきサインは以下の通りです。

  • 毛が極端に抜け始めた: 数本抜けるのは正常ですが、使うたびに何十本も抜ける場合は土台の寿命です。
  • 毛先が摩耗して短くなった: 長年使うと摩擦で毛先が短くなり、「しなり」がなくなって埃をかき出す能力が低下します。

「10年使って毛先が自分の靴の形に馴染んできた」という状態は、まさに愛好家の証。育てる感覚で付き合えるのが天然毛ブラシの良さです。
ちなみに筆者は、Boot Black(ブートブラック)の馬毛ブラシを10年以上愛用しています、

Boot Black(ブートブラック)の馬毛ブラシ(持ち手側)
Boot Black(ブートブラック)の馬毛ブラシ(ブラシ側)

汚れ落としのタイミングは「帰宅後の10秒」

ブラッシングのタイミングは、「帰宅して玄関で靴を脱いだ直後」。これがベストです。 時間は片足たったの10秒で構いません。

「後でまとめてやろう」と思うと続きません。脱いだその場で、砂埃を玄関の外へ追い出すイメージでササッと払う。この10秒の積み重ねが、5年後、10年後の革の状態に決定的な差をつけます。

おわりに

良いブラシを一本持っておくと、毎日のブラッシングが「作業」ではなく「靴との対話」に変わります。

クリームを塗るのは1ヶ月〜2か月に一度で構いません。でも、馬毛ブラシでの汚れ落としだけは、履くたびにやってあげてください。それだけで、あなたの靴はもっと長く、もっと美しく、あなたの足元を支えてくれるはずです。

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この記事を書いた人

新社会人で革靴の魅力に触れて以来、歴11年。 ジョンロブ、J.M. WESTON、オールデン、トリッカーズ、クロケット&ジョーンズからリーガルまで、多様な名作を自らの足で確かめてきました。時間をかけて馴染ませた実体験をもとに、カタログスペックでは語れない「靴の本質」を綴ります

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