1. 10万円の給付金を握りしめて選んだ「憧れの一足」
2020年、あのコロナ禍で手にした特別定額給付金。筆者は迷わず「一生モノの靴」への投資を決めました。選んだのは、タッセルローファーの金字塔、クロケット&ジョーンズの「キャベンディッシュ(Cavendish)」です。
しかし、この購入には今でも忘れられない「教訓」が詰まっています。実店舗での試着からネット購入へ。その過程で起きた、品番の勘違い。今回はその失敗談も含め、この靴の魅力と向き合い方を綴ります。
2. 英国の矜持と「オードリー」が繋ぐ歴史
クロケット&ジョーンズは1879年、英国靴の聖地ノーザンプトンで産声を上げました。彼らの歴史は「木型(ラスト)」の歴史と言っても過言ではありません。
以前の記事で紹介した名作「オードリー」が、パリ発の洗練されたラスト337を採用してブランドの評価を不動のものにしたように、クロケットは常に「その時代に最適な美しさ」を追求してきました。
その中で、アメリカのトラッドなタッセルローファーを英国流に解釈し直し、1980年代後半に誕生したのが「キャベンディッシュ」です。今やブランドのアイコンとして、世界中のファッショニスタに愛されています。
3. 「2」と「3」の境界線|ネット購入で起きた痛恨のミス
筆者が犯した失敗、それは「キャベンディッシュ2」と「キャベンディッシュ3」を混同してしまったことです。
ショップで試着したのは、日本人の踵に合わせて絞りを効かせた最新の「3(ラスト375)」。しかし、店舗には展示品しか在庫がなく、筆者はネットで新品を探しました。そこで深く考えずにポチったのが、欧米向けのクラシックな「2(ラスト325)」だったのです。
届いた靴に足を入れた瞬間、愕然としました。 「踵が、ガバガバだ……」
4. 失敗を「正解」に変えるための調整術
ラスト325(キャベンディッシュ2)は、3よりも踵周りがゆったりしており、筆者の足には少し余裕がありすぎました。しかし、ここで諦めないのが靴好きの性です。
筆者は厚手の中敷き(インソール)を挿入することで、この問題を解決しました。結果として、今の私の足にはジャストなフィッティングとなり、「5足ローテーション」の一角を担うほど愛用しています。
この経験から得た教訓は二つ。
- ウエストンやオールデン同様、ラストの違いは数ミリでも別物であること。
- 多少のサイズミスは、インソールの運用次第で「最高の相棒」に化けること。
5. オンオフを軽やかに跨ぐ、タッセルの魔力
失敗から始まった付き合いですが、キャベンディッシュ2の汎用性は圧倒的です。 スーツスタイルの適度な「抜き」として、あるいは軍パンやジーンズを格上げする「締め」として。この絶妙なボリューム感は、むしろ「3」よりもクラシックな重厚感があり、今ではこの「2」で良かったとさえ思っています。
6. まとめ:10万円を「経験」に変えるということ
もしあの時、完璧にサイズの合った靴をスムーズに買っていたら、私はここまで靴の構造やラストの違いに深く向き合わなかったかもしれません。
10万円という大金は、一足の美しい靴だけでなく、一生使える「靴選びの知恵」を私に授けてくれました。これからキャベンディッシュを検討される方は、ぜひ私の失敗を糧に、ラストの番号まで細かくチェックして、運命の一足を選び抜いてください。





