「黒のストレートチップ」に10万円を払う価値。オードリーへの背伸びを経て得た「安心感」。

リーガルを3足揃えて(別記事参照)、靴の手入れやローテーションの基本がわかってきた頃、次に欲しくなったのが「ここぞという場面で履く一足」でした。

冠婚葬祭や大事な仕事の時、足元に少しばかりの自信が欲しい。そう考えて筆者が選んだのが、クロケット&ジョーンズの「オードリー(AUDLEY)」です。

当時の自分には10万円を超える価格は明らかな「背伸び」でしたが、結果的にこの選択が、ここぞというときの安心感を、また、「靴に投資する」価値を教えてくれることになりました。

目次

クロケット&ジョーンズと「ハンドグレードライン」

クロケット&ジョーンズは、英国靴の聖地ノーザンプトンで1879年に創業した老舗です。彼らの最大の特徴は、世界中で「靴作りの教科書」と言われるほどの圧倒的な技術力と、膨大なアーカイブにあります。

もともとは他の一流ブランドの靴を製造する「OEM(委託製造)」の雄として、長年黒子役に徹してきた歴史があります。実は、誰もが知るような世界最高峰のブランドや、名だたるセレクトショップの靴を裏で支えていたのは、このクロケット&ジョーンズでした。

そのため、100年以上蓄積された「木型(ラスト)」の数は世界一とも言われ、自社ブランドとして表舞台に立ってからも、その引き出しの多さと確かな品質で、世界中の靴好きから「英国靴の良心」として支持され続けています。

そんなクロケット&ジョーンズのコレクションにおいて、頂点に君臨するのが、オードリーが属する「ハンドグレードライン」です。

通常のラインよりもさらに厳しい基準で選ばれた上質なレザー(アニリンカーフ)を使用し、熟練の職人が手間をかけて仕立てるこのラインは、まさにブランドの顔。 中でもオードリーは、誕生以来、世界中で最も売れているストレートチップの一つとして知られています。

見えない部分にまで宿るこだわり

素材や形だけでなく、ディテールも一切の手抜きがありません。 ソールは、底面の縫い目を隠す「ヒドゥンチャネル」という技法で美しく仕上げられ、土踏まず部分は「ベヴェルドウエスト」のように絞り込まれています。

こうした「機能に直接関係ないかもしれないが、美しさを追求するための手間」が随所に施されているからこそ、オードリーはただの仕事道具ではなく、ここぞという時の「勝負靴」としての品格を放っているのだと感じます。

オードリー ※筆者私物
オードリー ※筆者私物

4足目に「背伸び」をした理由

リーガル三銃士の次に、なぜ一気に価格帯を上げたのか。

それは、冠婚葬祭などの重要な場面で、「もっと良い靴があったのではないか」という不安を一切感じたくなかったからです。

中途半端な価格帯を買い足していくよりも、ストレートチップの傑作であるオードリーを無理してでも手に入れる。そうすることで、ストレートチップというジャンルにおいて「これ以上のものはない」という自分なりの納得感が欲しかったのです。

実際に履いてみると、足を包み込むようなフィット感と、背筋がスッと伸びるような感覚がありました。この一足があるだけで、どんな場所に出ても恥ずかしくないという「安心感」を手に入れることができたのです。

結論:背伸びは最大の「節約」になる

「普通の黒い靴に10万円」は、一見すると贅沢に見えるかもしれません。しかし、納得のいくストレートチップ(オードリー)を手に入れてからの「安心感」は何事にも代えがたいものがあります。

もし、あなたが今冠婚葬祭、あるいは、ここぞという場面に履く「黒のストレートチップ」を探しているのであれば、思い切ってオードリーまで背伸びをすることをおすすめします。

流行に左右されず、一生モノとして付き合えるこの靴は、早く手に入れるほどその恩恵を長く受けることができます。あの時の自分の決断は、今振り返っても本当に正解だったと感じています。

※この先筆者は、黒のストレートチップ靴を2足使い回していくことになります。ご紹介したオードリーと、もう一つの黒ストレートチップの使い分けについては以下記事をご参照ください

【王道の終着点】ジョンロブ・シティ2。背伸びして手に入れた「黒ストレートチップ」の最高峰。

Follow me!

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

新社会人で革靴の魅力に触れて以来、歴11年。 ジョンロブ、J.M. WESTON、オールデン、トリッカーズ、クロケット&ジョーンズからリーガルまで、多様な名作を自らの足で確かめてきました。時間をかけて馴染ませた実体験をもとに、カタログスペックでは語れない「靴の本質」を綴ります

目次