オールデン 9901 レビュー|サイズ選びの妥協が生んだ「痛みの教訓」と、それでも手放せないブラックコードバンの魔力

目次

1. 憧れの「黒い宝石」を前に、冷静さを欠いたあの日

オールデン 990(ダークバーガンディ)を手にした日から、やはりどこかでずっと気になっていたのが、色違い(ブラック)の同じモデルの『9901』でした。漆黒のコードバンが放つ独特の鈍い光には、990とはまた違う魅力があるからです。

いつもの某革靴ショップで出会ったその個体は、圧倒的な存在感を放っていました。しかし、一つだけ問題がありました。筆者のマイサイズは「9D」ですが、そこに置かれていたのは「8E」。

「バリーラストのEウィズなら、1サイズ下げてもいけるはずだ……」

その時の甘い考えが、後に「最高の一足」を「気難しい相棒」に変えてしまうことになります。

2. 9901が語る、オールデンの質実剛健な歴史

1884年、マサチューセッツ州ミドルボロで創業したオールデン。その名を世界に知らしめたのは、医療用矯正靴の分野で培った「歩きやすさへの執念」です。

9901は、ブランドの代名詞である「バリーラスト」を採用した外羽根プレーントゥ。1950年代に完成されたこの木型は、無骨さとエレガンスが共存するアメリカン・トラッドの象徴です。

特にブラックコードバンを用いた9901は、チャッカブーツの1339のようなカジュアルさの中に、冠婚葬祭ですらこなせるほどの「端正な顔立ち」を併せ持っています。

オールデン9901 ※筆者私物
オールデン9901 ※筆者私物

3. 「履けなくはない」が招く、小指の悲鳴

購入当初は「コードバンが伸びれば馴染む」と自分に言い聞かせていました。しかし、現実は非情でした。

バリーラストの「8E」は、ウィズ(幅)こそあれど、やはり「8」という全長(レングス)の短さが致命的でした。歩くたびに小指が内壁に衝突し、数時間も歩けば痛みは無視できないレベルに。

本来なら、私の「5足ローテーション」の主役を張るべきポテンシャルを持った靴です。しかし、どれほど美しくても「痛い靴」には自然と手が伸びにくくなる。これは高級靴を愛するすべての人が肝に銘じるべき教訓です。

4. それでも「休日」にこの靴を手に取ってしまう理由

登板機会は決して多くありません。仕事で歩き回る日には、怖くて選べないのが本音です。しかし、不思議なことに、予定の少ない休日にはこの9901に足を入れたくなる自分がいます。

それは、この靴が持つ圧倒的なコーディネート力があるからです

  • 軍パン(M-47など): 無骨な太めのシルエットを、黒いコードバンが上品に引き締めてくれる。
  • チノパン: プレッピーな王道スタイル。ホワイトとブラックのコントラストは、バーガンディとはまた違う都会的な印象を与えます。
  • ジーンズ(リゾルトなど): 最高の相性です。色落ちしたデニムに黒い宝石を合わせる。これだけでその日の気分が数段跳ね上がります。

痛みを覚悟してでも、この「足元の完成度」を優先したくなる。それだけの魅力が9901には詰まっているのです。

オールデン9901 ※筆者私物
オールデン9901 ※筆者私物

5. まとめ:サイズ選びは「希望」ではなく「現実」で

「いつか馴染む」という希望的観測でサイズを選ぶのは、博打に似ています。特に一生モノの高級靴であればなおさらです。

もし今、ショップで少し小さな、でも憧れの靴を前に迷っているなら、私は声を大にして言いたい。 「その一足がどれほど素晴らしくても、マイサイズを待ちなさい」と。

この9901は、筆者にとっての「最高の愛用靴」になれなかった「ここぞという時の頼れる代打」です。
皆さんはぜひ、痛みなく20年歩ける運命の一足を選んでください。

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この記事を書いた人

新社会人で革靴の魅力に触れて以来、歴11年。 ジョンロブ、J.M. WESTON、オールデン、トリッカーズ、クロケット&ジョーンズからリーガルまで、多様な名作を自らの足で確かめてきました。時間をかけて馴染ませた実体験をもとに、カタログスペックでは語れない「靴の本質」を綴ります

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