「いつかは、ジョンロブ(John Lobb)を」
革靴を愛する者にとって、一つの到達点に近いかもしれません。150年以上の歴史を誇り、世界中のエグゼクティブやファッショニスタを虜にしてきた「革靴の王様」。
そのラインナップの中でも、格式高い黒のストレートチップの象徴として不動の地位を確立しているのが「シティ2(City II)」です。
筆者が「自分にはまだ早い」と迷いつつ手にするに至った背景と、この靴が持つ真の価値を綴ります。
1. ジョンロブの歴史とシティ2の誕生
ジョンロブの歴史は、1866年にロンドンのリージェントストリートに構えたビスポーク(注文靴)工房から始まります。英国王室御用達を拝命し、その後1976年にエルメスグループの傘下に入ったことで、世界最高峰の既製靴(レディ・トゥ・ウェア)ラインが誕生しました。
今回取り上げる「シティ2」は、その名の通り、不朽の名作である初代「シティ」を進化させたモデルです。
最大の特徴は、2000年代に登場した伝説的な木型「7000ラスト」を採用している点。それまでのクラシックな丸みを帯びた造形から、わずかにノーズを長く、そしてシャープに削ぎ落としたシルエット。このモダン・クラシックの完成形とも言えるフォルムこそが、シティ2を世界最高のストレートチップたらしめている理由です。
2. 「自分にはまだ早い」という予期せぬ出会い
出会いは、筆者が懇意にしている某革靴ショップをふらりと訪れた時のことでした。
シティ2という存在は、筆者にとって「いつかは手にしたい憧れ」でありながら、同時に「今の自分にはまだ不釣り合いではないか」という気後れを感じさせるものでもありました。いわば、革靴生の後半戦で履くべき「上がり」の靴だと思っていました。
しかし、店員さんから紹介された、エルメス傘下だからこそ調達できる最高品質のカーフレザー、そしてミリ単位の狂いもない精緻なダブルステッチが施された一足を見て、「あ、今が買うべきタイミングなんだ」と不思議と納得することができました(あまりの美しさに購買欲が高まっただけなのをそれらしく書いているだけです、、、)。
足入れもスムーズで、履いた瞬間に「憧れのジョンロブを履けた」という感動は今でもよく覚えています。革靴界でよく言われる「出逢えば購入」の精神はこの時に身についたのかもしれません。

3. クロケット&ジョーンズ「オードリー」との贅沢な共存
当時、筆者の黒ストの主力は、クロケット&ジョーンズのハンドグレードライン「オードリー(Audley)」でした。オードリーもまた、英国靴の傑作として名高い一足です。
※オードリーとのエピソードはこちらをご覧ください。
「同じ黒ストを二足持つ必要があるのか?」という問いに対し、筆者は明確な使い分けを定義しています。オードリーという最高峰のスタンダードを知っていたからこそ、シティ2という「別格」の存在意義がより鮮明になったのです。
- クロケット&ジョーンズ オードリー: 日々のビジネスシーンを支える、信頼できる不動の愛靴。実用性と美しさを高い次元で両立させた「仕事の道具」としての黒スト。
- ジョンロブ シティ2: 冠婚葬祭、そして人生の節目となる大事な仕事のための「聖域の一足」。勝負どころで自身の内面を律するための「正装」としての黒スト。
※要は普段使いのオードリー、勝負時のシティ2です
この二足体制を築いたことで、「黒のストレートチップこそ、最低二足は持つべきだ」という持論は確信に変わりました。 冠婚葬祭や急な弔事など、ストレートチップは想定外の出番が多い靴です。二足あることで、不意の登板が続いても休ませるローテーションを確保できる安心感は代えがたいものがあります。 同時に、同じ「黒のストレートチップ」という枠組みの中でも、シチュエーションに応じた格式の使い分けができるようになったことで、筆者の革靴ライフの充実度はより一層高まりました。
4. 11年目の結論:王道こそ、早くに知る価値がある
「背伸びをしてでも、最高峰を手に入れる」
あの日、シティ2を選んだ判断は、筆者の靴人生において一つのターニングポイントとなりました。
最高峰を日常(あるいはここぞという場面)に取り入れることで、革を見る眼、造形を見る眼、そして靴を愛でる姿勢そのものが養われました。シティ2は、単なる贅沢品ではありません。履くたびに自分の立ち振る舞いを正してくれる、良き緊張感を与えてくれる存在です。
もし、あなたがかつての筆者のように「自分にはまだ……」と躊躇しているのなら。 その扉を叩くのは、今かもしれません。王道の終着点に見える景色は、あなたの靴人生をより豊かで、奥行きのあるものにしてくれるはずです。



