1. 玄関でどの靴に足を通すか。
毎朝仕事の日、玄関でどの靴を履くか。それは単なるルーティンではなく、「今日一日をどう過ごしたいか」を自分に問いかける時間だと思っています。
筆者は今、仕事日に基本となる5足を軸にローテーションを組んでいます。曜日で機械的に決めるのではなく、予定や天候、その日の服装に合わせて「これだ」と思う一足を選ぶ。
3足あれば回せるとは言いますが、5足あるからこそ一足一足を休ませる余裕も生まれるし、愛着も深まります。今回は、筆者の日常を支えている精鋭5足を紹介します。
2. 日常を支える5足の布陣
① 【安心安全の黒ストチ】Crockett & Jones / Audrey & John Lobb / City II
大事な仕事や、失敗できない出張。そんな日の足元を支えるのが、クロケット&ジョーンズの「オードリー」です。 1879年創業のクロケットは、多くの有名ブランドの靴をOEM生産してきた実力派。中でもこのオードリーは「ハンドグレードライン」という上位ラインの一足です。パリ発の洗練されたラスト「337」が描くセミスクエアのつま先は、気品がありながらも相手を威圧しない、まさに「誠実なビジネスマン」を体現したような佇まいが気に入っています。
ただ、もし今日が人生の節目になるような特別な日なら、僕は迷わずジョンロブの「シティ2」を手に取ります。 150年以上の歴史を持ち、かつては王室御用達でもあった「王者の靴」。世界最高峰とも言われる革質と、一切の無駄を削ぎ落としたシルエットは、履くだけで自分のステージを一段引き上げてくれるような感覚があります。「オードリー」と「シティ2」、この二大巨頭を状況に応じて履き分けるのが、筆者なりの黒ストチの楽しみ方です。
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② 【天候を気にせず履ける】J.M. WESTON / 641 Golf
「今日はタフな一日になりそう」「雨が降りそうだ」という日は、ウエストンのゴルフが頼りになります。 フランスの職人たちが作り上げるこの靴は、1955年の誕生以来、その形がほとんど変わっていない究極の定番品。タフな革質(ボックスカーフ)と、自社製のリッジウェイソールの組み合わせは、まさに実用靴の鑑です。 多少の雨や悪路でも、上品さを保ったままガシガシ歩ける安心感。一説には、あらゆる天候下で現場に駆けつけるジャーナリストに愛されたことから「ジャーナリストの靴」と呼ばれていますが、その信頼感は現代のビジネスシーンでも全く色褪せません。
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③ 【気分を盛り上げる】Alden / 990(ダークバーガンディ・コードバン)
少し気分を上げたい日や、オフィスカジュアルで足元に個性を出したい時は、オールデンの990を選びます。 1884年創業、アメリカ・マサチューセッツ州の老舗。この「990」は、農耕馬の臀部から採れる希少なコードバンを贅沢に使用した、ブランドを代表する名作です。 コードバンならではの鈍い光沢、そして履き込むほどに刻まれる「波打つような太いシワ」は、牛革では絶対に出せません。バリーラストという少し無骨な木型と、バーガンディの色味。自分の足に合わせて育っていく感覚が最も強く、履くたびに活力をくれる一足です。
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④ 【適度な抜け感】Crockett & Jones / Cavendish 2
仕事終わりに飲み会がある日や、少しリラックスして過ごしたい日。そんな時は、タッセルローファーのキャベンディッシュ2が活躍します。 ローファーというカジュアルな靴に、タッセル(房飾り)が付くことでドレス度を格上げした、実に英国らしいデザインです。紐靴にはない軽やかさがありながら、クロケットらしい品の良さはしっかり残っている。 飲み会の座敷での脱ぎ履きもスマートですし、足元に少し「余裕」を持たせたい時にこれ以上の選択肢はありません。スラックスはもちろん、オフの日のはデニムの裾を少しロールアップして合わせるのも筆者の定番です。
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⑤ 【歩きやすさを追求するなら】Alden / 54321(Vチップ)
「今日はとにかく歩く。でもスニーカーにはしたくない」。そんな日は、迷わずオールデンの54321、通称「Vチップ」を選びます。 この靴に使われている「モディファイドラスト」という木型には、面白い歴史があります。もともとは足に障害を持つ人のための医療用矯正靴をルーツとしており、土踏まずをグッと支えて、指先を自由に解放する独特の形状をしています。 履いた瞬間に足裏にフィットし、一歩踏み出すのが楽しくなるような歩行性能。スニーカーのような軽快さがあり、一日が終わった後の足の疲れが明らかに違います。一度この心地よさを知ると、抜け出せなくなる名作です。
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3. 結びに:5足あるから、10年履ける。
なぜ5足必要なのか。それは単なるコレクションではなく、靴を長く大切に履くための「知恵」でもあります。
一足履いたら中2〜3日は休ませてしっかりと湿気を抜き、適切なケアを行う。このサイクルを守ることで革の寿命は驚くほど伸び、結果として10年、20年と一緒に歩める相棒になっていきます。朝の玄関で「今日はどれで行こうか」と悩む時間は、筆者」にとって欠かせない楽しみの一つです。
基本はこの5足で完璧な布陣ですが……人生には想定外の事態も起こります。
急なアクシデント、予期せぬ豪雨、あるいは過酷な出張。そんな「もしも」の時に、玄関の奥で出番を待っている【緊急登板用の靴シリーズ】が実はまだ控えています。
次回は、筆者のローテーションを裏で支える「番外編靴」についてお話しします。











